プロンプトエンジニアリングを通じて「キャラ特有の会話」を実現
株式会社集英社様
課題/お問い合わせ背景
集英社様で所有している週刊少年ジャンプなどをはじめとした5,000作品以上のマンガをユーザーの好みに合わせてレコメンドするサービスの検討をしていた
それに対する電通&電通デジタルによる生成AIを活用した対話型のマンガレコメンドサービスの提案を受け、実現に向けてAI開発の協力会社を探しており、Hakkyにお問い合わせをいただいた
ポイント
プロトタイプからプロダクションへのシームレスな移行 「会話体験」という定義が難しいコンセプトに対し、できる限り早くプロトタイプを提供することで、可能な限り手戻りなくプロダクションへの移行を実現。 | キャラ固有の応答表現の実現 性格や喋り方など、「どのようなキャラクターを作り上げるか」をしっかり目線合わせし、プロンプトに組み込み、会話ロジックを実装。 | 自然な会話体験の構築
ユーザーと長くテンポよく会話ができるよう、キャラクター側から語りかけたり、逆にやってはいけないことの指定をするなどの工夫をすることで応答精度を向上。 |
事例の詳細
DEAIBOOKSとは
「DEAIBOOKS」とは、「少し未来のマンガ図書館」を舞台にしたAI対話型のマンガレコメンドサービスです。
AIである司書見習いの「会原ぴたり」がユーザーとの会話を通じて、その人の趣味・嗜好に合わせた最適なマンガとの出会いを提供し、ユーザーの「潜在“読"求」を刺激するコンセプトになっています。
「DEAIBOOKS」では、ローンチから2ヶ月で累計レコメンド数は20万タイトルに達しました。
Hakkyでは、この「DEAIBOOKS」のサービスを支えるAIチャットボットの開発を担いました。
プロジェクトの進め方
「司書見習いのキャラクターとの会話体験」という、要件定義を行うことが極めて難しい内容をすり合わせていく必要があったため、プロトタイプをできる限り早くプロジェクトメンバー内で使ってもらい、フィードバックをいただいてロジックを改善しながら、最終的なプロダクションに着手する形でプロジェクトを進行しました。
今回のシステムはサーバ上に、大規模言語モデルを活用して構築しました。今回のシステムは、既存のAI言語モデルを活用しクラウド上に構築しました。
今回のプロジェクトにおいては、電通&電通デジタル様とD2C ID様と3社間で共同でプロジェクトを進行し、弊社はAIの要件定義と開発はもちろんのこと、アプリケーションのインフラ全般、バックエンド、DBやDashboardの開発も行いました。
Hakky社の体制
各フェーズのタスクに応じて必要な専門人材をアサインし、隔週定例を実施しながらプロジェクトを進行しました。
PM:1名
機械学習エンジニア:1名
バックエンドエンジニア:1名
データサイエンティスト:1名
データエンジニア:1名
データアナリスト:1名
プロトタイプからプロダクションへのシームレスな移行
プロジェクト開始時点ではキャラクターの性格や喋り方などの詳細要件を作成している段階だったため、「どういうキャラクターを作り上げるか」の検討と並行して会話ロジックを実装していく必要がありました。
早期から具体イメージを用いて認識合わせをするべく、必要最低限の会話UIを用意し、プロトタイプを操作できるような環境を用意しました。
検証段階で構築した会話ロジックを最終的には実際のプロダクトへ移植することを前提に構築することで、大きな開発の手戻りを発生させることなく、シームレスに進めることができました。
Hakkyでは、「データでプロダクトを価値あるものにする」というミッションの元、様々なプロダクトにAIの機能を組み込んできました。その中で培った知見を活かし、PoC(Proof of Concept:技術検証)だけでは終わらせず、しっかりPoCからプロダクションへの移行をスムーズに行う方法を確立しています。
キャラ独特の応答を実現するプロンプトエンジニアリング
DEAIBOOKSのコンセプトとして、司書である「会原ぴたり」との会話を通して自然にユーザーの趣味嗜好に関する情報を収集し、新しい作品との出会いを創出する必要があるため、応答や提案における体験の作り込みは非常に重要なポイントでした。
前提となる「会原ぴたり」のキャラクター情報や実現したい会話体験を言語化し、プロンプトに組み込むことで、キャラクターならではのリアクションなどを踏まえて応答できるようにしました。
また会話を長く続けるには、一方的に質問を重ねるだけでなく「会原ぴたり」側からも適度に自己開示をしながらユーザーが回答しやすいような投げかけをするなど、テンポよく会話を進めていく必要があります。
そのためには会話の中で「やってはいけないこと」なども命令に組み込み、可能な限り不快な思いをすることなく会話ができるように設計しておく必要があります。
これらの要素を踏まえた上で、複数のプロンプトエンジニアリングのテクニックを用いて応答精度を向上させました。
ほかにも今回、集英社の5,000作品以上ある作品情報やそれぞれに紐づく膨大なキャラ情報はもちろんのこと、会話するAIである「会原ぴたり」のプロフィール情報やDEAIBOOKSの世界観の情報などを応答に入れることを実現にあたり、プロンプトエンジニアリング以外の手法も取り入れております。
プロジェクトの進め方の面でも、ロジックの面でも工夫を行うことで、「キャラクター固有の表現」を実現しつつ、「趣味嗜好にあった新しいマンガとの出会い」を実現することができました。
今後の展望
DEAIBOOKSでは、新しいマンガとの出会いをサポートするAI対話型エンジンとして、今後も毎月アップデートを行いながら、1人でも多くのユーザーが新しいマンガと出会える体験を提供できるようにして行けたらと考えています。
編集後記
本サービスの開発を進めている過程で大規模言語モデルや機能的なアップデートが何度か入り、その度にロジックを見直したり、最先端の技術トレンドを的確にキャッチアップしながら最善の実装方法を検討してきました。
また、toCサービスということもあり、様々なユーザーが様々な使い方をすることが想定されるため、検証と改善に関係者の皆さんと多くの時間をかけて進めた結果、良い形になったプロジェクトだったと考えています。
今後も「データでプロダクトを価値あるものに」のミッションを掲げ、最新の技術キャッチアップを怠らず、様々なプロダクトの開発を行なって行きたいと考えています。
株式会社集英社様ご紹介
集英社は、1926年に創立された日本の大手出版社であり、「週刊少年ジャンプ」などをはじめとし、幅広いジャンルの書籍や雑誌を出版しています。多くの人気マンガ作品を世に送り出し、多くの作品がアニメ化や映画化されているだけでなく、ファッション誌や女性誌、文学雑誌も手がけており、幅広い読者層に支持されています。さらに、デジタル出版や映像メディア、ゲーム開発など、コンテンツの多角化にも力を入れており、国内外で高い評価を受けています。