CASE STUDY

出典を示せるRAG回答で、Web相談の回答業務をサポート

GPTsのPoCから、根拠と柔軟な対応を両立する本格運用へ。Difyを活用したWeb相談回答サービスの開発

株式会社法研 ヘルスケア事業部

課題/お問い合わせ背景

法研様は、健康・医療情報の専門企業として、電話・Webによる健康相談サービスを長年運営されています。その健康相談業務のなかで、Web相談への回答をAIで支援する「Web相談GPTs」のトライアル導入を行い、基本的な情報提供型の質問には実用レベルで対応できていました。

一方で、専門的な相談に向き合うほど、次のような限界が見えてきました。

  • 出典(根拠)を示せない

    医療・健康という領域では、回答の根拠を示せることが欠かせません。しかしGPTsの回答では出典を明示できず、相談員が安心して使うには物足りない状態でした。

  • 一人ひとりの状況に応じた柔軟な対応が難しい

    利用者の状況や背景はさまざまですが、回答が画一的になりやすく、ケースごとのきめ細かな対応がしづらいという声がありました。

  • 技術的な拡張性が低い

    品質の改善やコストの把握、他業務への展開といった「その先」へ広げていくには、技術的な制約がありました。

専門的な相談に対して、相談員が安心して使える「根拠を示せる回答」と、ケースごとの「柔軟な対応」をどう両立するか、この課題に取り組むパートナーとしてHakkyにご相談をいただきました。

ポイント

本プロジェクトのポイントは、「出典を示せるRAG回答」「Difyワークフローによる柔軟な対応」「評価・改善を続けられる拡張性」の3点に集約されます。

先行実施したGPTsのPoCで見えた3つの壁を、それぞれ次のように乗り越えました。

出典を明示できるRAG回答で、相談員の信頼性と効率を両立

個別ケースに応じた柔軟な対応フローを、Difyのワークフローで実現

評価・改善を続けられる、拡張性のある基盤

専門文献や診療ガイドライン等をナレッジベース化し、出典を示した回答を生成。相談員が根拠を確認しながら回答でき、調べ直しの手間も軽減。

Difyのワークフローで相談タイプを判定し、状況・背景に応じて対応を分岐。GPTsでは難しかったケース別の柔軟な対応を可能に。

LLM評価による改善サイクルを組み込み、継続的に品質を改善。相談ジャンルの追加や他業務への展開にも広げやすい拡張性を持つ。

事例の詳細

本プロジェクトは、ナレッジベースとRAGの設計、Dify環境の構築、出典明示ロジックを含む基本回答フローの開発、社内テストにもとづく改善サイクル、本番環境への移行までを約5ヶ月で進めました。

プロジェクトの進め方とスケジュール

回答の良し悪しは、実際の出力を見比べないと判断できません。そこで、テスト項目(回答精度・出典表示)を法研様と一緒に作り、社内メンバーの皆さまにご協力いただいたテストとフィードバックをもとに、プロンプト改善・RAG調整・回答ロジックの改修を行いました。

Hakkyは、相談データのクレンジングとナレッジベース/RAGの設計から、Dify上のワークフロー実装、運用マニュアルの整備と本番環境への移行までを担当しています。

手軽なGPTsから、"本格運用"に耐えるAI回答支援へ

法研様は、Hakkyと共に実施したWeb相談GPTsで基本的な情報提供型の質問への回答まではすでに到達していました。ただ、専門的な相談になるほど「この回答は何に基づいているのか」を示せないことがネックとなっていました。本プロジェクトは、DifyのRAGとワークフロー、そしてLLMによる評価で日々の回答業務でそのまま使える形まで引き上げる取り組みです。

開発プロダクト:「Web相談回答サービス」

Hakkyが開発を担ったのは、相談員の回答を支援する 「Web相談回答サービス」です。

相談員がWeb相談に回答する際、AIが出典付きの回答案を示し、相談タイプに応じて対応を分岐させ、さらにLLMが回答の品質を検証します。相談員は根拠を確認しながら回答できるため、調べ直しや裏取りの手間を減らしつつ、回答の質を維持できます。

本サービスに実装した主な機能は以下の通りです。

① 出典を明示するRAG回答

専門文献や診療ガイドライン等をナレッジベース化し、出典を明示した回答を生成。相談員が根拠を確認しながら回答できるようにしました。

② ケース別の柔軟な対応ワークフロー

Difyのチャットフローで相談タイプを判定し、利用者の状況・背景に応じて対応を分岐させます。

③ 品質チェック(LLM評価)

生成した回答をLLMが評価し、回答漏れや具体性のムラを検知して改善サイクルを回します。

① 出典を示せるRAG回答という土台

医療・健康の相談で最も重視したのが、回答の根拠です。専門文献や診療ガイドライン等をナレッジベース化し、法研様から「ここから必ず取得してほしい」とご指定いただいた信頼できる情報源を中心に据えました。その情報源からfirecrawl(Webクロール)で取得した内容をRAGで回答に反映することで、「どの情報源に基づく回答か」を明示できるようにしています。

回答案には参照した情報源が添えられるため、相談員は元の記述にあたって内容を確かめたうえで回答できます。根拠を確認できることは、調べ直しの手間が減るという効率面だけでなく、相談員が自信を持って回答を出せるかどうかに直結します。

あわせて、社内では「出典+回答検証シート」を使って回答を1件ずつ点検し、公的・一次情報を中心に構成できているか、信頼性の低い情報源が混ざっていないかを確認しました。「信頼性の低い情報源は用いない」という方針は、ナレッジベースの設計段階から徹底しています。

② Difyワークフローによる、ケース別の柔軟な対応と品質チェック

相談は一様ではありません。Difyのチャットフロー内でIF–ELSEノード等により相談タイプを判定し、利用者の状況・背景に応じて対応を分岐させることで、GPTsでは難しかったケース別の対応を、ワークフローとして明示的に制御できるようにしました。

回答は、次のような流れで組み立てられます。

相談文を受け取ると、まず相談タイプを判定して対応フローへ振り分けます。続いてナレッジベースを検索して根拠となる記述を特定し、出典を紐づけたうえで回答案を生成。最後にLLMが「回答漏れがないか」「出典が活かされているか」「具体性にムラがないか」を評価します。GPTsではモデル任せになっていた部分を、どこで何をするかが見えるワークフローとして組み直した点が、本サービスの中核です。

検証で見えた「出典の活用度や具体性のムラ」といった構造的な課題にも、プロンプトの見直しとワークフローの調整で対応しました。単に回答を自動化するのではなく、品質を継続的に引き上げる仕組みを作り込んでいます。

③ 作って終わりにしない、改善し続けられる拡張性(品質チェック)

AIは作って終わりではなく、運用しながら改善し続けられることが重要です。本サービスでは、LLM評価による改善サイクルをDifyのワークフローに組み込み、プロンプトや対応フローを継続的に見直せるようにしました。

相談ジャンルを増やしたいときはナレッジと分岐を足し、評価の観点を変えたいときはチェック工程のプロンプトを差し替える。どこに手を入れれば何が変わるかがワークフロー上で見えるため、運用しながら育てていけます。相談ジャンルの追加や他業務への展開にも広げやすく、「その先」につながる基盤です。運用コストや利用状況は、Difyの標準的な分析機能で把握できます。

Hakkyの支援:AI駆動開発で、PoCから本格運用まで一気通貫

本プロジェクトでは、要件の整理から実装、社内検証、プロンプトやワークフローの調整までを、AI駆動開発をベースに短いサイクルで回しました。仕様を固めきってから作るのではなく、まず動くものを用意し、実際の出力を見ながら直していく進め方です。「根拠を示せているか」「相談員が手を入れずに使えるか」といった判断は、出力を見比べないと決められないためです。

GPTsで始めたAI活用を、根拠を示せて柔軟に対応できる回答支援へ。Hakkyは、その移行を要件定義から運用の入り口まで一気通貫で支えました。

Hakkyとの取り組みを振り返って(法研様より)

本プロジェクトを通じて、法研様からは以下のような嬉しいご評価をいただいております。

  • 確かなエビデンスデータを基にしたAI構築により、専門性が高く誤りのない回答精度を実現できました。

  • 専門職の意向を丁寧に汲み取り、現場が使いやすいシステムで作業負担を大幅に削減できました。

  • 専門職の意見を反映しつつ回答品質と業務効率を両立できました。

  • 整理されたわかりやすいドキュメントで社内での認識共有、合意が非常にスムーズでした。

今後の展望/ネクストステップ

社内検証を経て改善を重ねたWeb相談回答サービスを土台に、将来的には、社外対応(AIトリアージ等)も視野に入れ、全社的なAI活用基盤へと育てていく構想です。AI基盤を共通化すれば、運用コストを抑えながら、事業部をまたいだ相乗効果も生まれます。

編集後記

GPTsで手軽に始めたものの、出典・個別最適・拡張性の壁に当たる。これは、いま多くの企業が通るパターンです。

本プロジェクトでは、DifyのRAGとワークフロー、出典の明示、そしてLLMによる評価サイクルを組み合わせ、「根拠を示せて、ケースごとに柔軟に対応できる回答支援」を作り上げました。

単なる回答の自動化ではなく、相談員の信頼性と回答の質を底上げする仕組みづくりが要点です。

Hakkyは、AI駆動開発をベースに、PoCから本格運用・継続改善までを一気通貫でサポートします。

相談業務・サポート業務・専門領域のQ&AをAIで強化したいとお考えの企業様は、既存のGPTs/PoCの診断や、Difyへの移行のご相談からでも、ぜひお気軽にお問い合わせください。

機械学習プロダクト開発支援

株式会社法研 ヘルスケア事業部様ご紹介

株式会社法研様は、1946年(昭和21年)創業の、健康・医療・年金・介護・福祉といった社会保障分野に特化した出版・情報サービス企業です。

月刊『へるすあっぷ21』や『週刊社会保障』などの刊行物に加え、健康保険組合・企業・自治体向けのソリューション事業や、電話・Webによる健康相談サービスなど、人々の健康と安心を支える事業を幅広く展開しています。

ヘルスケア事業部では、半世紀以上にわたる支援実績と専門知識をベースに、時代の変化に伴う心と体の健康課題に応えるサービスを多角的に展開しています。

「従業員のメンタル不調の予防」や「生活習慣病の重症化対策」といったクライアントの切実な悩みに対し、24時間電話健康相談やメンタルヘルスカウンセリング、特定保健指導や専門医紹介などの解決策をご提案。

医師や保健師など専門職ネットワークを活かし、企業の健康経営や福利厚生の推進をトータルでサポートする体制を構築しています。

https://www.sociohealth.co.jp/

株式会社法研

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